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2021年6月マレーシアの完全封鎖フルロックダウンと経済対策

5月28日の新型コロナ感染者数が9020人と過去最高となったマレーシアでは、NSC(国家安全保障会議)の特別会議で6月1日〜14日までフルロックダウンとなることが決定し、ムヒディン首相より発表されました。

※マレーシアではロックダウンをMCO(Movement Control Order=行動制限令)の名称で呼んでいます。段階別にCMCO(Conditional Movement Control Order=条件付き行動制限令)、RMCO(Recovery Movement Control Order=回復のための行動制限令)などに分類されていて、それそれ経済・社会活動における制限が異なります。

マレーシア完全封鎖完全ロックダウン経済対策

5月の中旬にイスラム暦の新年ハリラヤアイディルフィトリを目前に控え、感染予防のためロックダウンにあたるMCO(3.0)が発令されていたのですが、新規感染者が増え続けた結果、中重症患者を受け入れるクアラルンプール病院、スンガイブロー病院などのICU病床の使用率が100%近くなるなど、医療崩壊寸前になったことも大きな要因とされています。このようなことをふまえての今回のフルロックダウンとなりました。

経済刺激政策と経済活動のバランス

フルロックダウン中の経済や社会活動は基本的に許可されませんが、必要不可欠の産業に関しては許可し、またそれ以外の業種でも申請をすることで活動許可を出すなど柔軟な姿勢となっています。そして、マレーシアで初めてロックダウンとなった2020年3月18日から始まった最初のロックダウンでは1日あたりRM24億の経済損失がありましたが、国民の生活を守るための給付金の配布、政府所有地のテナントに向けた一定期間の家賃無償化、税金の支払いの延期などさまざまな経済刺激政策を打ってきました。

今回のフルロックダウンに突入する前日の5月31日にムヒディン首相は「政府の財源には限りがある」としながらも、RM50億の直接財政投入を含むRM400億の経済支援策「PEMERKASA+(ペメルカサ)」を発表しました。また、2020年以来、新型コロナ肺炎の経済支援にはRM600億を財政投入に費やしています。
「PEMERKASA+(ペメルカサ)」は主に公的医療の強化や支援、公共福祉の支援、事業継続の支援の3つから構成されます。

まずは今回のロックダウンの最大の目的である新型コロナ肺炎対策で、現在満床を超えるところも出てきてるコロナ対応病院の集中治療室のベッド数を増やすため、RM4億5,000万を含む総額RM10億の支援をします。

公共福祉の支援策としては、月収RM5,000以下の世帯に対して最大でRM2,500の現金を支給するためRM21億を支援に盛り込みました。

事業継続支援と経済政策を軸に刺激策を展開

消費の刺激策として目玉になっているのは自家用車購入時の売上サービス税(SST)と、住宅の所有を促す国家プログラム「the Home Ownership Campaign」におけるstamp duty(印紙税※)の免除です。どちらも2021年12月末まで延長されることが現在決まっています(延長の可能性もあり)。

RM35億相当の低金利融資やロックダウンの影響を受けた中小企業(SME)は、3ヶ月間ローン返済の猶予などの措置。これは約500万人の借り手にとってRM300億相当の救済措置と同等となります。また20万人の雇用主と250万人の従業員を守ためRM15億の賃金補助プログラムを1ヶ月延長することを決定しました。また従業員5人未満のmicro SMEs(零細企業)には追加でRM500の補助金を支給します。

ロックダウンで最も影響を受けたツアーガイドやバスドライバーなど観光産業の従事者のためRM6,800万の支援します。

※マレーシアでは物件購入の際に最大で2%ほどのstamp duty(スタンプデューティー=印紙税)が課せられます。

マレーシア完全封鎖完全ロックダウン経済対策

建設業界からの政府に対する支援要請

マレーシアで17,000人の会員を有するMBAM(マレーシアマスタービルダーズアソシエーション)は、「労働者の不足、資材の高騰、コンプライアンスの遵守などの追加コストに対する支援」をマレーシア政府に要請しました。
それに対して政府はプレスステートメントで「主要な公共インフラの重要な保守および修理作業と重要な建設作業をフルロックダウンの期間中に稼働させる」ことを認可する方向で調整する動きとなりました。

必要不可欠産業以外の操業を禁止している今回のロックダウンでは異例の措置ですが、これは建設分野がマレーシアの経済成長を押し上げる強い要素の一つとなっていという見方もできます。

現在マレーシアでは、飲食、医療、ライフライン、物流などのエッセンシャルビジネス(必要不可欠のビジネス)のみ操業が許可されています。製造業などは業種によって10〜60%の労働力で稼働が可能。また商業施設はエッセンシャルビジネス以外の営業が禁じられ、買い物の際は一世帯につき2名、自家用車の移動は運転手を含め2名までの乗車可、移動は半径10km以内までなどの制限がもうけられています。違反者は罰金か逮捕という厳しいペナルティが課せられます。

今後のマレーシアの社会状況について

6月に入りワクチン接種が進み、1日あたり15万回を超えてきている。今回のMCOはワクチン接種と感染者のバランスを考慮したものとなっています。5月28日に9020人を記録した感染者数が、およそ2週間後の8日の発表では5566人まで激減しました。これは政府の決定が一定の効果をあげていることのあらわれと評価されています。

経済および社会活動の再開に力を入れてたいマレーシア政府は感染者の減少に呼応して柔軟な対応で第二段階、第三段階と早期の封鎖解除をしていく意向を示しました。

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