2020年から現在までのマレーシアの株価について
2020年のマレーシアの株価概要
3月18日にロックダウン1.0(マレーシアで最初のロックダウン)が発令されたため2020年のGDPは第2四半期(4〜6月)は記録的な落ち込みを見せましたが、第3四半期(7〜9月)は6月初旬にロックダウン規制が一部緩和されたことにより、縮小ペースに歯止めがかかりました。
その中で輸出は好調でした。中でも官民主導で力を入れている半導体チップ、医療用ゴム手袋といった製造業を中心とした外需の増加により縮小はわずかにとどまりました。内需に関してはロックダウンにより移動や経済活動が制限されたことなどから、個人消費が減少し、また設備投資などが減ったため縮小しました。
第4四半期(10〜12月)になると経済回復の勢いが足踏み状態となります。というのも10月中旬に再度ロックダウンとなったため経済活動に制限がかかったからです。
2020年3月にマレーシア初のロックダウンにより国内の株式市場は急落しました。
3月19日、FTSEブルサ・マレーシアKLCIインデックス(FBMKLCI)は1月の高値から24.3%も下落、1,219ポイントとなり2009年9月以来の低水準となりました。
一方、債券の利回りが急上昇し、マレーシア政府証券(MGS)の10年債利回りが80.4bps上昇しました。3月24日には最高の3.57%を記録しました。
2月から5月のかけて売りが強まる中、政府の支援策に支えられたことから復調の兆しがみえ、7月にはマレーシア証券取引所(KLSE)全体の売買高が118億株と過去最高を更新しました。これは5月以来約2カ月ぶりとなります。
マレーシア証券取引所(KLSE)における2019年後半は1カ月当たり500億株程度の水準でしたが、6月の月間の売買高は1605億株で、4月から3カ月連続で1000億株を超える活発な取引となりました。
2020年5月以降は、世界の市場を反映して、国内の資産価格の幅広い回復が見られました。
センチメントが引き続き改善されたため、7月以降は景気回復の兆しが見られたことから、ポートフォリオの資金流入も回復しました。
上り調子だけではなく利益成長に沿っった形で最終的に2020 年のマレーシア証券取引所(KLSE)全体の時価総額は、前年同期比 6.2%増となりました。2020年のBursa Malaysiaの全体の時価総額は、前年比6.2%増のRM1.82兆円(2019年。RM1.71兆円)となりました。
また、新型コロナワクチン接種に関する進展を受けセンチメントが改善する中で、同様にFTSEブルサ・マレーシアKLCIインデックス(FBMKLCI)の時価総額は前年比3.3%増のRM1.06兆(2019年:RM1.02兆)と、わずかながら増加で終了しました。
2021年のマレーシアの株価概要
2021年、マレーシア証券取引所の第1四半期の純利益は前年比で87.5%増加しました。しかし5月に3度目のロックダウンが発表されたことで株式市場とリンギットが下落しました。
今後の見通しとして、ワクチン接種と国家回復計画により社会活動の緩和が進むにつれ、株式相場は上向きになると見られています。マクロ経済の情勢低迷により、市場で回復が遅れていた経済分野は、再び回復の兆しを見せると予想されます。特に「第3四半期と第4四半期に経済が徐々に再開することで、内需も改善する可能性がある」と、マレーシアのローカル銀行投資調査部がコメントを発表しました。
3月に1,219ポイントまで下落したFTSEブルサ・マレーシアKLCIインデックス(FBMKLCI)は、2021年6月に1,600前後までに回復し、以前のような堅調を維持しつつあります。最終的に2021年末には1,700ポイント前後になるという予測もあります。
新型コロナでゴム手袋と電子機器株はアウトパフォームに
ゴム手袋メーカーとテクノロジー株は、マレーシア証券取引所でアウトパフォームとなっています。この2つの株価の上昇はパンデミックによる医療用ゴム手袋の世界的な需要、自動車向け半導体チップの世界的な供給不足によるもので、機関投資家だけでなく個人投資家の注目も集めました。
半導体チップは2021年1月に最高値をつけた後、2〜3月にかけて若干落ち着きましたが、今後も人工知能(AI)、5G技術、モノのインターネット(IoT)など新技術によって需要は高いままと予想されています。
新型コロナ収束の完全な見通しがつかない現段階ではゴム手袋の手袋の世界的な需要は引き続き堅調であると予想されるため、2021年以降も高収益を維持すると予測されています。クアラルンプール市内のアセットマネジメント会社CEOは「ゴム手袋製造業において、このまま収益が確保できるようであれば、引き続き海外からの投資を集めることは可能だ」との見方を発表しました。ワクチン接種が進んだことによりゴム手袋の需要は衰退するとの見方もあるため株価は2020年よりも下落しましたが、それを狙って投資家が動くため引き続き注目株であることは間違いありません。
【追記】マレーシアの現在のロックダウン状況
マレーシアは6月1日から完全ロックダウン(FMCO=Full Movement Control Order)となっています。2回のワクチン接種完了者は約10%となりました。またロックダウン緩和のため4段階からなる「国家回復計画」のうち第1段階目標をクリアしました。そのため7月3日からクランタン、パハン、ペラ、ペルリス、トレンガヌの5州、7月7日からはペナンが第2段階に進みました。特にペナン州の緩和に関しては2回のワクチン接種率が10%を超えたことが大きいようです。
クランバレー(クアラルンプール、セランゴールからなるクアラルンプール首都圏)では感染者が多いといった印象ですが、これは工場や建設現場から発生したクラスタに起因するものとなっています。政府は官民連携(PPP)のワクチンの優先接種プログラムを開始しています。これは日本でいう職域接種のようなもので、雇用主を通じて行われ、会社もしくは近くのクリニックに出向いて接種をします。
今回のクラスタ発生により製造業の稼働が停止しましたが、政府はこれを「一時的な措置」との見解を示しています。ワクチン接種率があがることで新規感染者を減らし工場を再稼働させることでマレーシアの経済回復の起爆剤にしたいと考えています。