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【現地からの最新レポート】アフターコロナを見据え得たマレーシアのワクチン状況と国家回復計画

2021年6月1日〜28日までマレーシアは完全ロックダウン(FMCO=Full Movement Control Order)となっています。
実質的に3回目のロックダウンということで、国内では「ロックダウン3.0」と呼ばれています。ロックダウンによって経済損失は出ていますが、新型コロナ禍以前のマレーシアは東南アジアでも屈指の経済成長率を誇り、2019年のGDPは4.3%(日本は0.7%)を記録していました。そしてマレーシアは今、早期の経済復興が最大の課題となっています。

その中で、マレーシア政府はアフターコロナを見据えた「国家回復計画」を発表しました。

マレーシアワクチン接種パスポート国境オープン

完全ロックダウン緩和後の国家回復計画の発表

15日にムヒディン首相が今後のマレーシアの「国家回復計画」について、特別声明を発表しました。その内容は4段階となっていて、経済や社会生活をコロナ以前に戻すようにするための段階について述べています。

今回の発表は6月から安定供給に入るとみられるワクチン接種率をあげ、各段階における社会、経済の制限を緩和させていくために必要ロードマップとなっています。
内容的にも今回の完全ロックダウンは「封鎖」により、パンデミックの危機から脱するための「段階的出口戦略」と位置付けられています。
ムヒディン首相の声明の中で特に重要なのは「この計画は、私たちが日常生活に戻るため、データと科学に基づいて慎重に設計されたガイドである」という発言です。
安易に社会活動を許可するのではなく、ワクチン接種を増やすことで実現できる新規感染者の減少を、統計的見地から実行するという目論見です。

国家回復計画」の段階的な目標基準は以下をご参照ください。

第1段階
2021年6月1日〜28日までの「完全ロックダウン(FMCO=Full Movement Control Order)」。

第2段階
新規感染者数が4,000人を下回り、ICU病床の使用率が回復し、公衆衛生が危機的な状況か脱する。
2回のワクチン接種を終えた者が人口の10%に達する。
経済活動は部分的に許可され、最大80%の従業員の出社が許可される。
操業や許可される産業分野が拡大される。
社会活動、州境を超える活動は禁止。

第3段階=最短で本年8月から
新規感染者数が2,000人を下回り、ICU病床の使用率がじゅうぶんに回復し、公衆衛生が安全になる状況となる。
2回のワクチン接種を終えた者が人口の40%に達する。
ほぼ全ての産業分野の操業が許可される。ただし感染拡大やクラスターの発生につながる活動は禁止される。
経済活動は部分的に許可され、最大80%の従業員の出社が許可される。
教育を含む社会活動、スポーツ活動は段階的に許可される。
議会の再開。

第4段階=最短で本年10月末から
新規感染者数が500人を下回り、ICU病床の使用率がじゅうぶんに回復し、公衆衛生が安全になる状況となる。
2回のワクチン接種を終えた者が人口の60%に達する。
人口の60パーセントが2回のワクチン接種を完了している。
全ての経済分野の操業が許可される。
多くの社会活動が許可される。
州をまたぐ移動が許可され、国内旅行も許可される。

過去のロックダウンにはなかった新型コロナワクチン接種

今回、「完全ロックダウンまでに至るとは、さすがに想定していなかった」という声もありました。マレーシア政府の分析では、もしここでロックダウンを行わなければ最終的に1日あたりの新規感染者数は13,000人となり、マレーシアの医療崩壊は確実となるという予想だったのです。

しかし、ここではっきりしているのが、今回のロックダウンは過去2回と全く状況は異なります。決定的な違いは「新型コロナワクチンの接種が始まった」ことです。

昨年は完全封鎖しか対応策が見つからず、(世界が一斉に前例のない事態となったため)先行きが不透明」(ヌーアヒシャム保健相)でした。
しかし、今年4月からは「ワクチン接種プログラム」がスタートし、医療従事者や必要不可欠分野の従事者から対象に接種が始まりました。
当初は1日あたりの接種回数は約5,000〜8,000回でしたが、5月にはその数は10倍以上の50,000〜80,000回に増加。さらに6月には約20万回に達し、数ヶ月以内には30万回になると想定されています。

6月11日現在、ほぼ全ての医療従事者および関係者は接種完了。また、60歳以上の50%が1回目のワクチン接種を完了しています。新たにブキジャリル国立競技場を接種会場にしたことで1日あたり1万人の接種が可能になるなど、最終目標としている人口の80%がワクチンを接種するという目標が前倒しで達成できるという見方もあります。

保健相からワクチンパスポートで国境オープンの可能性を示唆

5月28日に9,020人と過去最大となった新規感染者数は6月23日には4,743人ほぼ半減しています。新型コロナ対策で陣頭指揮をとってきたヌアヒシャム保健相は、ここにきてワクチン接種が完了したが国内旅行や海外旅行に出かけることを可能とする「Covid-19 vaccination passport(ワクチンパスポート)」の導入する考えがあることを述べました。

計画の段階では2022年までかかると想定されていたワクチン接種による集団免疫の獲得が、早ければ2021年年末に達成される可能性を示唆。自身が内分泌科の医師でもあるヌーアヒシャム保健相は、「ワクチン接種率があがり、集団免疫を獲得することで、マスク着用、ソーシャルディスタンスなどの規制も緩和され日常生活が元に戻る」ことを強調しています。

資源大国マレーシア経済を担うのは石油、天然ガスなどのエネルギー産業、スズ、銅、鉄などの資源産業、そして東南アジアのみならず世界中から直接投資を受ける製造業などです。これらの産業は海外(近隣諸国)からの労働者に頼る面が多いため、最終的に国内において集団免疫が獲得されることで、国境が開く時期が早まる可能性があります。その時に備えて、国内の体勢を万全に整備しつつワクチン接種率をあげているのが現在のマレーシアです。

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