2021年マレーシアの記録的豪雨による洪水の影響と支援について【現地レポート】
マレーシアでは2021年12月17日から広い地域で豪雨が続き、一部の地域では河川が氾濫するなどして住宅や道路に被害をもたらしました。
今回の水害で被災されたマレーシアの皆様に心よりお見舞い申し上げます。
【100年に一度の豪雨。今回の洪水の原因は】
12月17日からマレーシア半島全域に渡って断続に降り続いた雨。24時間以上に渡って止むことのなかったその雨はあっという間に、なんと一カ月分の平均降雨量を超える量となり「100年に一度」の未曽有の豪雨となりました。
マレーシア環境水資源省の発表によると、今回の大雨を伴った悪天候はフィリピンを襲った台風22号を取り巻く大気の影響、そしてモンスーンが重なったことでマレー半島上空に大きな雨雲をもたらしたそうです。さらにタイミング悪く満潮も重なったことで、各地の河川氾濫にも繋がりました。
12月20日に降り続いた雨はすでに止み、悪天候をもたらした大気もマレー半島から徐々に遠ざかっているため、今後は豪雨の心配はない見込みです。
【マレーシア各地の被害状況】
今回の被害が大きかった地域は下記となります。
・スランゴール州クラン
・スランゴール州シャーアラム
・パハン州北部
上記以外のスランゴール州各地、パハン州とヌグリスンビラン州のいくつかの地域も被害が確認されていますが、河川氾濫の被害が極めて大きく住民の避難人数も膨大な地域は、上記の三地域となります。
人が多く集中しているクアラルンプールでは一部住宅の浸水などの被害はあったものの被害は最小限に留められており、これはクアラルンプールの地下に作られているSMARTトンネル(※巻末参照)の効果が大きかったものと思われます。
スランゴール州のクランとシャーアラムは国内有数の工業地帯と港湾を抱えていること、そして冠水によって道路が寸断されている地域もあり、一部の地域では物流にも支障が出ています。
【マレーシアの支援の状況および、スピーディーな民間支援システムの構築】
今回被害が大きかった地域の住民は、国や地域、宗教団体が用意をした施設に避難。支援物資の手配も官民それぞれから進んでいます。
政府や軍が様々な救済・援助を始める中、個人単位で助けてほしい人と手助けなどボランティアをしたい人がアプリ上で近くの人を見つけてやり取りができるマッチングアプリ「Kita jaga Malaysia」(キタ ジャガ マレーシア)が、なんと豪雨の2日後にリリースという急スピードで開発され、早速多くの人達が活用をしています。
また、日本のSuicaと同じ機能を持つ電子マネー「Touch’n Go eWallet」(タッチンゴー イーウォレット)では、アプリ上で個人が寄付できる機能を急遽、アプリに追加搭載。
多くの人達が自身の経済範囲でできる援助として活用し、SNS上でも活発に拡散が進んでいます。それ以外にも色々な企業や団体が寄付窓口を設け、被災者の元に金銭を始め、物資が迅速に届けられるよう呼び掛けています。
官民問わず、このような時のマレーシアの対応スピードの速さと人々の発想の柔軟さにはいつも驚かされます。
【豪雨によるマラッカへの影響】
Sheng Tai InternationalがTHE SAILを開発中のマラッカ州では道路の一部で冠水などありましたが、それ以上の被害報告は上がってきていません。
今後も引き続き注意を払う必要はありますが、町は概ね落ち着いている様子です。
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今回の豪雨による最新レポートをお届けしました。
最後にもう一度、今回の豪雨により被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧をお祈り申し上げます。
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※SMARTトンネル
過去にクアラルンプールで頻繁に発生していた鉄砲水対策として2007年に完成。The Stormwater Management and Road Tunnelの略。このSMARTトンネルは普段は道路(トンネル)として利用され、市民も日常的に使用していますが、降雨量が増えた際に雨水がトンネル下部の水路に水が流れ込むように作られ、トンネル上部は車の通行が可能のまま運用します。そして、洪水が発生した際はトンネルの通行が禁止となります。このSMARTトンネルの開通により、それまでクラン川とアンパン川に挟まれることで多発していたクアラルンプール内の洪水は劇的に解消されています。